――― 伍 【涙雨】
今日、本当は洗濯物のバイトが入ってたんだ。
だけどあいにく朝から土砂降りだろ?
洗濯したって気持ちよーく乾いてくれないんなら意味ねぇなと思ってよ。
申し訳ないけど、洗濯物を預かる約束をしてたおばちゃん達に晴れてからでもいいかって聞きに行ったんだ。
まぁその約束してた家が六軒くらいあったから、例のごとく乱太郎としんべヱにも手伝ってもらったんだけど。
もちろんおばちゃん達もこんな日に洗濯なんて出来るわけないのは分かってるからさ、晴れた日にやってくれるだけでも助かるわーなんて言ってくれたんだよ。
だけどこっちとしてはせっかくのバイトの予定がパーだろ? その分銭が逃げてっちまったようなもんだよ。
天気に文句なんて言っても仕方ないのは分かってたけど、悔しくってなー。
どうにか別のバイトが見つからねーかとしばらく町で粘ったんだけど、それでもダメでさ。
仕方なく学園に帰る道を歩いてたんだよ。
そしたら竹林の中で、おっさんが一人、困った顔でウロウロしててな。
「なぁ乱太郎、しんべヱ。あの人何やってんだと思う?」
「へ? ……あ、ホントだ」
「下を見ながら、なんか困ってるねぇ。声かけてみる?」
まぁ俺達だしな。見た目が怪しくない困ってる人がいたから、とりあえず話を聞いてみることにしたんだよ。
そしたらさ。
「あぁ……私はここの地主の者なんだが、ちょっと困っていてな……。どうも今日の雨で筍が出てきているらしいんだ。うちの竹は全部マダケなんだが、マダケの旬と言えば四月末まででもう過ぎている。採れば旨いんだろうが、自宅で食うには三つもあれば充分だ。旬の過ぎた筍など買う人もいないだろうし、かと言ってこのままにしておくと竹が生えすぎてしまうから……。もしよければお前達、持って帰ってくれないか。もちろん代金はいらない」
って言うんだよ!
タダだよつまり、タダ!!
あひゃひゃひゃひゃ!!
あ? ……あ、わりぃ。つい。
で、ほら。このオレがタダって聞いて、食いつかないわけねぇだろ?
「やりますやります、やらせて頂きまぁーすっ!!」
ってなもんだよ。当たり前だろ。
で、そっからのオレの勢いたるや、お前らにも見せてやりたいくらいだったなー!
掘れば筍が出る! って感じ! 百発百中だよ、百発百中!
こんな時期になんでこんなに筍が出てくんのかとは思ったけどよ、タダでうまいもんが取れる上に大量となりゃあ、テンションも上がるってもんだよな!
時期外れだからマズいだろうと思われるかもしんねーけど、安く売れるかもだし。
それにホントにエグ味も少なくて美味いもんなら、ちょっと試食を用意すりゃあ逆に高値がつくかもしれねーだろ?
もう考えるだけでウハウハだよ。
で、手持ちの風呂敷から溢れるくらいに採れてよ、さてそろそろ帰るかーって頃だ。
急に雨脚が強くなってさ。
竹林で見通しが悪いってのを差し引いても、視界が半尺くらいしかねぇの。
さすがにこりゃあ慌てて帰るにもあぶねぇなと思ってよ。
「やべーな。ここにいても風邪ひくだけだろうし、どっか雨宿りできそうなところ探すぞ。足元に気をつけろよ」
手探りで足を踏み出して、竹に掴まって歩くような状態だよ。なんとなく分かるだろ?
でも正直、雨宿りの場所なんて期待してなかったんだよな。
だって竹林だぜ?
でっかい木でもありゃあまだマシかもしれねーけど、それもねぇだろうしよ。どうすっかなぁと思ってた時だよ。
向こうのほうに、なんか洞穴みたいなもんが見えたんだ。
こりゃありがてぇやと思ってな。
「おい、もうちょっと行ったら洞穴がある! そこ行って休もうぜ!」
乱太郎としんべヱも、俺の一言で気付いたんだな。出来るだけ急いで駆け込んだよ。
しかも入ってみると、結構な広さの洞窟なんだ。
「っひょー、助かったなー! いいとこにあったもんだぜ」
「もう服がグチョグチョだよー」
「この洞窟、結構奥まで続いてるみたいだね。微かにだけど、向こう側からも風が吹いてる」
全身濡れてたから、指で確認するまでもなかったんだろうな。乱太郎が奥に目を凝らしながらそう言ってよ。
まぁどっちにしろ奥に進むつもりはなかったし、へーそっかなんて言いながらみんなで濡れた服を干してたんだ。
こういう時、忍者の持ち物ってホント便利だよな。
手甲に入れてる棒手裏剣を壁に刺して、帯を繋げば洗濯紐にもなるんだから。
でなぁ。
褌一丁になって、年中体があったかいしんべヱにくっついて、雨が治まるのを待ってたんだよ。
そしたら、奥からガサッて音がしてさ。
「な、なにっ!?」
「奥から聞こえたね。誰かいるのかも」
いの一番にしんべヱがビビった声あげて、乱太郎が慌てて振り返ってさ。
俺達っていっつも見当違いの方向に振り返るけどさ、その時は外はホントにすげー土砂降りで、洞窟の外の音なんて雨音しか聞こえねぇってくらいだったんだよ。
だからオレも必死で奥を睨みつけてたらな。
また、ガサッて音がするんだよ。
いいや、この時はもうガサッじゃねぇな。ザシッ、ザシッて誰かが歩いてくる音だ。
オレ達ゃますます警戒してよ、怪しい奴だったらその辺の石でも投げてやろうと思って手に持ってるわけ。
そしたら奥の暗がりから、くたびれた夫丸服のおっさんが出てきてな。
「おぉ、なんか騒がしいと思ったらガキどもか。こんなところでなにしてる」
って言うわけ。
拍子抜けしちまったこっちは、揃ってポカーンだよ。なにしてるもなにも、見りゃ雨宿りだってわかるだろって。
「あ……私達はその。ここの地主さんに頼まれて時期外れの筍をとっていたんですが、見ての通りひどい雨なので、ここで雨宿りを……。おじさんはなにしてるんですか?」
乱太郎が聞くくらい、そのおっさんはちょっと不思議な雰囲気だった。
着てる夫丸服は土埃で薄汚れて、ヘロヘロにくたびれててさ。髭なんて何日も剃ってないんだろうなって分かるくらいボーボーなわけ。
そんな格好なもんで、当然髪の毛なんかもボッサボサ。
ありゃあタカ丸さんが見たら問答無用で引っこ抜いた挙げ句、ヘアケアしまくるだろうなって感じだった。
けどおっさんはそんなこと気にしてないみたいでな。
「筍! なんだ、確かに季節外れではあるがそんないいものがあるのか! なんてこった、こいつは降って湧いた幸運だ! よしお前達、もうちょっと奥まで入って来い。そんな入口にいちゃあ、跳ねっ返りの雨水と風が当たってますます体が冷えちまうぞ」
乱太郎の質問なんて聞こえてなかったみたいな顔して、とにかく筍に喜んでな。真っ暗い洞窟の中を、奥まで進んでいくわけ。
さすがにそんなに嬉々とした顔されちゃ、断るに断れねぇだろ? だから俺達も大人しくついてったんだよ。
そしたらちょっと広くなってる場所があって、そこに枯れ枝が積んであったり、陣笠が置かれてたりしたんだ。
で、ははぁ、こいつは戦の時に怖くなって逃げてきちまった人かなんかだなと思ってよ。
だったらなんか事情があるんだろうし、詳しく聞くのも忍びなくてな。
みんな気付かねぇ振りでキョロキョロしてたんだ。
「まぁ座れよ。人も来なくて寂しいところだが、お前らみたいなガキ三人が座るくらいの場所はある。雨宿りだろうと、まさかこんなところに人が来るとは思わなかった」
かなりでっかい声で笑うおっさんでなぁ、洞窟によく響くんだよ。オレ達が思わず耳塞ぐくらい。
けどそんなに奥に進んだ覚えはないのに、雨の音なんてもう聞こえちゃいなかったなぁ。オレも気にしてなかったし、多分二人もそんなことは半分忘れてたと思う。
「しかし雨に降られるとは災難だったな。ここにいると天気なんぞ分からなくなっちまうから雨の音なんて久し振りに聞いたが、降られる側としちゃあ面倒だろう。まぁなんにせよ、これも巡り合わせってやつだ」
パンッていい音がして、おっさんが膝を打ってな。
「頼む! お前達のとった筍、一つでいいから俺にも食わせてくれないか!!」
はーい、ここで問題。オレはどういう反応をしたでしょうかー。
……さすがは組、みんな苦い顔だなぁ。
あ? 分かりきってるって? そりゃそうか。
そうです。ウゲーって顔のまま固まったオレがいました。
「アレ? あの……やっぱり駄目か?」
「いえいえ、そうじゃなくってですね」
「きり丸はドケチなので、くれ、とか、ください、とか言われるのが大嫌いなんですよぉー」
まぁ、しょぼくれた顔をしたおっさんにいつもの解説だわな。
その後もまぁだいたい同じで、じゃあどう言うんだーとか、例えばーとか。
結局、一つ食ってやるぞって言われてホイホイ釣られたんだけど。
……残念な顔で見んな!! やるって言葉はドケチにはものすごーく素晴らしい言葉なんだ!
でさぁ。
「まぁ食うのはいいんだけど、これ、生で食うんすか? 掘りたてはアクもなくて甘いって言うけど、せめてもうちょっとなぁ……」
「え。あー……そういえばそうだなぁ。俺は別に生でも構わんのだが……」
どうしても食いたいらしいんだけど、俺が余計なこと言っちゃったからか、なんか悩み始めちゃってな。
まずったなぁって思ってたら、乱太郎としんべヱがこそこそ話し始めてさ。
「あのーおじさん、もしよければそこに積んである薪を使ってもいいですかぁ?」
「手元に火種があるので、うまく火がついたら焼き筍になるかなぁと思うんですけど」
「焼き筍!?」
もうさ、焼き筍って単語にものすげー食いつくの。
「あぁ、使え! どんどん使っていいぞ!!」
「ありがとうございまーすっ!」
はしゃぎ始めたおっさんを横目に、乱太郎達はいそいそ準備を始めるわけ。喜ばせるのは別にいいんだけど、さすがにオイオイと思ってよ。
「火種って……打ち竹かぁ? そんなもんよく持ち歩いてたな乱太郎。ってか、一応忍び道具だろ? フツーのおっさんの前で使っていいのかよ」
「だってこんなに食べたがってるのに、一番おいしく食べさせてあげる努力をしないのは可哀想ってしんべヱが言うからさー」
「僕ねー、お塩なら持ってるんだよー」
誤魔化し笑いで乱太郎が言ったら、しんべヱはもう満面の笑みだよ。
ま、しんべヱだしな。そういう理屈もあるかぁなんて思っちゃって。
おっさんに筍の皮を剥いてもらってる間に、俺達で薪を組んでたんだ。
そしたらさ、それがえらく埃かぶってんだよな。正直言って、数カ月は使ってねぇだろうなってくらいには。
まぁ元々ワケありのおっさんぽいし、その場所も隠れ家には打ってつけみてーな場所だからさ。もしかしたらおっさんの前にここを使ってた、似たような事情の誰かの置き土産なのかなぁって思ったんだ。
薪が乾きまくってたおかげで、たいして苦労なく火もついたのはありがたかったけどな。
そっから先は、みんなで焚火を囲んで筍を見てるだけ。
軽く埃を払った枝に筍を刺して塩振っただけなのに、おっさんはすげー嬉しそうでさ。
「……そんなに筍が好きなんすか?」
「そうだな! ……あー、いや……前はそんなでもなかったんだけどなぁ。ほら、ここって竹林の中にあるだろう? そしたらなんだか急に筍が食いたくなってなぁ。食いたいなぁ、食いたいなぁって思ってたんだ。嬉しいなぁ、食えるとは思わなかった」
この辺りで、なんか変な話だなぁと思ったんだ。
だってホント、竹林の中なんだぜ?
そんなに食いたけりゃ、ひと月前だったらそれこそ取り放題だったろうしさ。
生でも平気だなんて言った人なのに、なんで食わなかったんだろうなぁって。
その頃にいなかったような感じでもないし、っつか、ふた月くらいは籠ってたんじゃねぇのって見た目なんだよ。
でもまぁしんべヱはそんなの気にしてないみたいで、僕らが来てよかったですねぇなんてフツーに会話しててさ。
乱太郎もちょっと変な顔してたんだけど、気にしないことにしたんだろうな。
ふつふつ水分が出てきて、いい感じに焼けてきた筍をおっさんに差し出したんだ。
「そろそろおいしそうに焼けてきましたよ。食べましょう」
って。
そしたらおっさん、ホントにホントに嬉しそうな顔してさ。
「ありがとうな、ありがとうなぁ。またこれが、これが食えるだなんて」
なんて言ってさ、ボロボロ泣きながら筍に噛(かじ)り付いたんだ。
熱かっただろうけど、火傷するくらいの熱さもまた嬉しいみたいでな。泣き笑いして、はふはふ言いながらそりゃもううまそうに食うんだよ。
そしたらなんか、オレ達もいろいろ考えちゃってさ。
「……おっさん、良かったらオレのも食えよ」
「私のもどうぞ食べてください。まだまだたくさんありますから、ゆっくり食べてくださいね」
「えっと、僕は……んー……半分、どうぞっ!」
しんべヱが食いもんを半分譲るってんだから、どんくらい胸に来る姿だったか分かるだろ?
そしたらますますおっさんは、ありがてぇ、ありがてぇって泣きながら食べてさ、一個食べるごとにオレ達に頭を下げてくるんだよ。
そんなのしなくていいからゆっくり食いなよって笑ってたんだけど、確か……追加で焼いた、五つ目の筍を食ってるときかな? カランって変な音がして。
ん? って思ったらさ。
おっさんの、筍を支えてたほうの腕がな。
骨になって地面に転がったんだよ。
ゾワッとしてな、思わず三人で後ろに飛び退いた。
声なんて出なかったな。喉の奥に引っ込んじまったよ。
でもそうやってる間にもおっさんの体はどんどん骨になってってな。
腕の次が足、足の次が腹。
そのたびに軽ーい音を立てて骨が転がるんだけどさ。それでもおっさんはやっぱり嬉しそうに筍を食うのに一生懸命でよ。
なんだか不思議な感じだったな。怖い光景のはずなのに、なんかしんねーけど胸の奥がギュウウッて痛くなってよ。
最後のほうなんて、頭と右手だけが骨の上に浮いてるんだ。それでも本当に本当に嬉しそうに、筍を食ってるんだよ。
最後の一個もようやく食い終わって、満足そうに大息を吐いてな。
おっさんはくしゃくしゃの泣き笑いで、オレ達にもう一回頭を下げた。
「―― ご馳走さん」
深い、深いお辞儀だったよ。
それきりカランカランって音がして、骸骨が転がった。
焚火がパチパチ言って、竹の皮とボロボロの夫丸服、埃まみれの陣笠が転がってるのが妙に切なくってな。
「……よっぽど未練だったんだな、筍」
思わず呟いたら、乱太郎としんべヱも泣きそうな顔しててさ。
「そうだね。……喜んでらしたもんね」
「こんな分かりづらい場所だから、見つけてももらえなかったんだねぇ。……ねぇ」
しんべヱが見上げてきた意味を、オレも乱太郎もなんとなく察してな。おっさんの骨に、ちょっと待っててくれよって言って、まだ濡れてたけど服を着て外に出た。
土砂降りだったのが嘘みたいに晴れ間が出ててな。地主さんの所に行って、掻い摘んで事情を話したんだ。
大慌てで坊さんが呼ばれて、竹林の隅っこで供養されたよ。そこに、採った筍を何個か供えてきた。
供養が終わる頃にまたぽつぽつと雨は降ってきたけど、その時は少し、陽が射した天気雨になっててな。
なんだかそれが泣き笑いのおっさんの顔を思い出させて、オレ達はしんみりしながら手を合わせて帰ってきたのでした。
おしまい。
■ □ ■
きり丸の話が終わる頃には、室内は情けない泣き顔でいっぱいになっていた。
「良かっ……良かったなぁ……! その人、よっぽど筍……ふぇ……!」
「いい話だねっ! すごくいい話だよねそれ……っ!!」
ずびずびと鼻水を垂らしながら涙する虎若と、目を真っ赤に充血させた三治郎が鼻をすする。その隣ではやはり目を赤く腫れさせながらも、必死に涙を堪えて震えている兵太夫がふるふると唇を開いた。
「庄左ヱ門の話が結構怖かったのに、最後の最後でなんでこう……! バカッ! きり丸のバカぁ……!」
「でも良かったよぉー! 食べたいもの食べれて成仏できたならホントに良かったよぉー!」
不意打ちの感激に困惑してか罵声を口に出さずにはいられないらしい兵太夫に対し、喜三太はわんわんとあられもなく泣きわめく。対照的なその姿をもはや誰も揶揄することも出来ず、涙声の集会はぐずぐずとその場を切ないものにした。
「そのお墓、今度僕らも行ってもいい? 筍以外にも、おいしいものを持って行ってあげようよ」
「あ、それいいな! 饅頭とか団子も持って行こう」
「美味しいお茶を入れてお供えするのもいいよね。食べ物ばかりじゃ、きっと喉が渇いちゃうだろうし」
「なら着物も! ボロボロの夫丸服だったんなら、一枚くらい着物を供えてあげるのもいいんじゃない? 着道楽とまではいかないけど、うちの家からもらってくるよ!」
金吾の提案に団蔵、庄左ヱ門、伊助も同意する。
名も知らぬ他人の墓参りにここまでわいわいと騒げるのも一年は組ぐらいのものだろうが、それを胸が熱くなる思いで見て、きり丸、乱太郎、しんべヱは顔を見合わせた。
そこに、外からガタリと音が響く。
「なんだか騒がしいと思って見に来てみればお前達、いつまで起きてるんだ! さっさと寝なさい!!」
突如として響いた怒声に、場は一気に騒然となる。
気付けば、いつの前にか雨の音は止んでいた。
「じゃあまた明日の昼休みに話そう! 忘れて出かけたりするなよ!」
「分かったー!」
庄左ヱ門の言葉に、クモの子を散らすように自室へと戻る面々が後ろ髪を引かれる思いで返答を投げる。
同じく慌てふためいて部屋へ戻った三人が布団の上に倒れ込むと、もう注意の必要はないと判じたのか、外はすっかり静まり返っていた。
重ねての説教を回避できたことにほぅと安堵の息を吐き、いつの間にかぐったりと重くなっていた体を布団に潜り込ませる。
「夢中で話してたら、すっかり遅くなっちゃってたね」
「ホントぉー……ふわぁああ。僕もう眠くなっちゃった……」
「オレもー」
三人三様にあくびを噛み殺し、もそもそと体勢を整える。しょぼつく目を擦りながら誰からともなくお休みと呟き、屋根から滴る雨粒の名残を子守唄に目蓋を降ろした。
→終章
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