下に行くほど新しいです。

孫兵と左門の会話小ネタ。
孫さもに見えるかもしれませんのでご注意ください。
……というか三年について本気出して考えてたら孫さもはなかなかに美味しいかもしれないと揺らいでいる!


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 作兵衛が突然長屋の木戸を開けて、左門を放り込むように預けてきたのはつい先刻のことだった。
 あまりと言えばあまりだがこれも例によって例のごとく、三年ろ組の馴染みの三人で外に出ていたところ、内二人が迷子になり、それを捕獲している最中とのことだった。
 無論この場合、内二人の個別名は挙げるべくもない。
 どうにか先に左門を捕まえることが出来たものの、連れ歩くのは更なる危険を侵しかねないという理由から一度学園に戻った作兵衛が一時預けを決断したのは仕方のないことかもしれなかった。
 そこに明確な説明が付随されていれば、孫兵の心象も多少穏やかだったことは想像に難くない。
 突然なんの説明もなしに預かってくれと叫ばれて放り投げられた左門の扱いに、孫兵は正直困惑を隠しきれなかった。
 元より、人間との付き合い方よりも虫や爬虫類との付き合い方を心得ている。
「……縄で腰を繋いだはいいが、話すこともないし……」
 眉間を寄せ、しかし考えたところで前向きな見解が出てくるわけもなく溜息を吐く。人に対峙することはやはり苦手な部類であることを自覚せずにはいられない。
 こうなればいっそ普段通り愛するジュンコ達と戯れていようかと決意を固めた、ほぼ同じ頃合に孫兵は腕を引かれた。
 思わず体ごと傾ぎ、慌てて左門を見返る。
「いきなりなんだ、左門」
「腕、痛そうだ」
「腕? ……ああ、これか。見たことなかったか?」
「ない。風呂もあまり同じ時間になったことがないし、初めて見た」
 まじまじと凝視するその視線の先には、この暑さで上着を脱いでいたために露出していた腕があった。
 そこには様々な噛み跡と小さな刀傷、もしくは痛々しい火傷の跡が刻まれる。
「痛くはないのか」
 凝視していたその目が上がり、同じ真摯さで左門が孫兵を見る。その目に思いがけずたじろぎ、ただこくりと頷いた。
 その反応にそうかと眉間を寄せた左門の手が、そろりと腕に触れる。
「全部お前のペット達に関する傷か?」
 問いに、また一つ頷く。
「そうだな。幸いまだ授業でつけられた傷はないし、ほとんどが彼らの噛み傷や刺し傷、それか毒を出すために僕が自分でつけたものだ。……そんなに気になるものかな」
「気になるというより、興味深いと言ったほうが正しい気もするな。なぜ孫兵はそんな傷を負ってまで毒のある生き物を飼おうとするのだろう。先生方に怒られたことも一度や二度ではないはずだし、果ては我らが会計委員長や田村先輩にも何度か飼育経費について言われてるはずだ。だけど孫兵は一歩も引かない。ずっと不思議に思ってはいたんだが、聞く機会がなかったのでずっと疑問のままだったんだ。自分の知らない事を、私はちゃんと知っておきたい」
 腕を見つめたままはっきりと口に出された言葉に、そういえばこの友人は、学年の中でも人一倍探究心が強いのだったかと思い起こす。そのために論語を嗜むことを好み、予習好きな藤内の上を行く学力を誇る。
 ただしそれが奮って見えないのは、やはり実習での迷子頻度の高さのせいだろうかと思わず笑みを浮かべた。
 その笑みに、左門の首が傾いだ。
「……なんだ、私はなにかおかしなことを言ったか?」
 不思議そうに瞬く目に、また笑う。それに気分を害したように頬を膨らませた姿がまさに歳相応の子供に見え、孫兵はその手を柔らかな頬に宛がった。
 驚いたように見返った左門の表情に、おかしげに肩を揺らす。
「左門は人間という生き物を体現しているみたいだ」
 意思のある生物ならば少なからず持つ好奇心。それを探究心にまで高め、自ら先を見ようとするのはヒトという生き物のみだと誰かが言っていた気がする。それが同じ委員会の先達だったのか、それともあまり関わり合う機会のない最上級生だったのか思い出すことも出来ないが、孫兵にとってそれは目の前にいる同窓そのものに見えた。
「いつも作兵衛や三之助がいたからあまり話したこともなかったかもしれないけど、これからは機会を見つけて話でもしよう。お前と話すのは楽しいかもしれない」
 目を細めての孫兵の言葉に、また左門の目が瞬く。しかし戸惑うかと思ったその矢先、迷うことを知らない表情は咲くように華やいで見せた。
「うん、そうだな! 私もまだまだ知らないことが多い! お前なら私よりずっと頭が良いし、話すのも楽しい気がするな!」
 なぜか胸を張って張り上げられた声に孫兵の喉が揺れる。未だ作兵衛は迎えにくる様子もなく、食事の時間にもまだ早い。せっかくその記念すべき一回目なのだからなにか良い話題はないものかと頭を掻いた孫兵に、左門は輝かんばかりの目で詰め寄った。
「まずはお前がなぜ毒のある生き物を好んでいるかを教えてくれ! このまま聞きそびれたのでは、夕飯のお代わりどころか寝ることも出来ない気がする!」
「……あぁ、そうか。すっかり忘れていた」
 そういえば最初の話題はそれだったのだと思い至り、ならばそれをと柔らかに笑む。
 そこから約一刻を過ぎた頃にようやく三之助を捕獲して戻った作兵衛は、あまりにも和やかな室内の空気になにが起こったのかと軽いパニックを引き起こした。


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左門は頭は良いけど成績が奮わない子だといい。論語や故事をたくさん知ってるから、探究心は他の子より強そうだなぁと。
そして孫兵は人間は「人間」という区分だと思ってたけど、左門を見てなんとなく「人間という生き物」の認識を考えられればいいと思う。
ペット扱いとか純真すぎるとかそういうのじゃなくて、考え方や思考の組み立て方が動物的に感じたためというか。
左門は作兵衛か、もしくは孫兵と組んだ時が一番強いと思う。
作兵衛は扱いを心得てるという意味で。
孫兵の場合、左門の動物的とも言える思考の先を読んで自分も立ち回れそう。


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ちょっと書いておきたくなったので。
現パロを書くとしたらの設定の吐き出しですので、そういったものが苦手な方はスルーをお願いします。


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学校
北摂にある私立の中高一貫の全寮制の男子校。
隣接して、理事長が同じ女子校がある。
室町での1年が中一、6年が高三。
全学年各3クラス。

乱太郎
大阪・門真の普通の家庭の子。
平凡なサラリーマンな家系を抜け出させようと、進学校へ。

きり丸
大阪・摂津にある教会に預けられていたが、土井先生に引き取られた。
やっぱりアルバイトの鬼。

しんべヱ
大阪・堺にある大手外資系企業の跡取り息子で理事長の孫娘の許嫁。
安かろうと高かろうととにかく美味しいものが好き。

庄左ヱ門
京都・上七軒にあるお茶屋(置屋や揚屋ではなくお茶っ葉屋)の息子。
学級委員長。

伊助
大阪・河内にあるクリーニング屋の息子で家事全般が趣味。
クラスの母親役。

三治郎
兵庫・加古川にある寺の子。祖父が山伏。
多少霊能力アリ。

兵太夫
京都・舞鶴の普通の家庭の子。
パソコンオタで、ロボット甲子園を目指し中。

団蔵
滋賀・大津の運送会社の跡取り息子。
母親が京都にある乗馬クラブの臨時講師をやっている関係で馬が大好き。

虎若
和歌山・有本の出身で父親がクレー射撃のオリンピック出場経験者。
暇を見つけては寮内にあるジムでトレーニング。

金吾
神奈川・鎌倉にある居合道場の跡取り息子。
日本有数の剣士である戸部先生の教えを請って関西へ。

喜三太
神奈川・足柄の大地主の家系。
小学生時代に苛めに遭ったことと、父親の転勤で関西へ。


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楽しかった!書き綴った!!


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ポッキーの日の左伏小ネタ

伏「先輩、ポッキーゲームしましょう」
左「お前な……頼むから時代を考えてから物を言えよ」
伏「えー、いいじゃないですか。嘘やでーでなんとかなりますよ」
左「だからそういう発言が……! つか、お前、そんな、おまっ」
伏「あれー? 先輩、もしかして照れてます?」
左「照れるわけないだろバカッ!!」
伏「じゃあ問題ないじゃないですか。はい先輩」
左「……ッ、……ん。なんだこれ美味しくない……」
伏「んんんんんんんんんんんー」
左「喋るなら口離せよ!」
伏「はぁい。ていうか、当たり前じゃないですかぁ。この時代にポッキーなんてあったら大変ですよぉ」
左「……え、じゃあこれ、一体……」
伏「大ヒントぉー。ここは医務室でぇす。で、それは薬棚から取りましたぁ」
左「…………お前、まさかこれ漢方薬の」
伏「あ、正解ですねー。これ、実はミミズの乾物ですー」
左「ぎゃあああああ! 粉末ならまだしも形そのまんまで食っちまっただろぉ!?」
伏「いいじゃないですかー、体に悪いものじゃないですしぃ」
左「良くない! 全っ然良くない!!」
伏「うふふふふー、すごいスリルぅー」


左伏でしかネタが纏まらなかった……!


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クリスマスにちなんだ小ネタです。
セリフのみ、6年の文次郎、小平太、長次、留三郎のみです。


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小「おー、留三郎! 今日も委員会活動、大変そうだな。なんだそのでかいズタ袋は!」
留「おぉ、長次に小平太。これか? まぁ使い古されてはいるが、ズタ袋って言うなよ。これにはもう修繕しようがなくなった金属片や木片が入ってるんだ。もうチビどもも部屋に返したし、あとはこれを捨てに行くだけなんだ」
小「ふーん。そんなもん、廃棄場に向かって投げれば簡単じゃないのか」
留「下級生をお手玉にしたりリフティング出来たりするようなお前と一緒にするな!!」
長「もそもそもそ……」
留「……は? なんだって?」
小「聞こえないぞ長次」
文「オイこらバカタレども、廊下を塞ぐな。通れんじゃないか」
留「っ、文次郎! バカタレはどっちだ、こっちが必死に長次の言葉を聞こうとしてるときにテメェという奴は……!」
文「なんだ、やる気か!」
留「やらいでかぁ!!」
小「二人ともうるさいぞ。口を塞げ」
長「……まるで……キリシタンの行事に出てくる……プレゼントを配り歩く老人のようだ……」
留「……あ?」
文「キリシタンの行事? ……っていうか長次。揚げ足を取って申し訳ないが、クリスマス、つまりナタラの事は日本に入ってきた時代もまぁ合ってはいるものの、さすがにその老人の件は時代考証がずれているような気がするんだが……」
小「文次郎、細かい事は気にするな!! で、なんだ長次。その老人がどうかしたか」
長「……なんでも世界中の子供達に……プレゼントを贈って歩くため……その背には巨大な……袋を背負っていると……聞いたことがある……。今の留三郎は……まるでその姿と……似ていると思ったんだ……」
留「世界中の子供にプレゼントぉ!?」
小「それはすごいな! 学園にいる下級生の分だけでも相当な重さになるだろう!! それを持ち運べるとはその老人、只者ではない!」
文「うむ、確かにすごいな。しかも仮に子供の枠内に、五年まで含めるとなるとそれはもうすごい重さだろう。長次、それは本当に老人の伝承なのか」
長「間違い……ない……。赤い装束を着、大きな袋を……背負っているそうだ……」
留「赤い装束……」
小「あ、ドクタケの忍装束なんかちょうどいいかもしれないな!」
文「ふん、面白い! ならば鍛錬代わりに今夜はドクタケの忍装束を奪ってきて、後輩共にプレゼントでも配り歩いてやるか! プレゼントは無論、鍛錬用の筋トレグッズだ!!」
小「そうかー? ボールやパペットのほうがいいと思うんだがなぁ。あとは苦無や等身大の藁詰め人形だな!! 塹壕堀りにも役立つし、人形は締め技の練習に使える!」
留「アホか!! プレゼントといったら菓子だろ。プレゼントというものは、相手が喜んでこそのものだろうが」
文「なにぃ!? 筋トレグッズは喜ばれんとでも言うつもりか!」
小「菓子ばかり食っていては体が鈍る原因になるぞ。ここは一つ、体を使って遊べるものをだな!」
留「いーや、菓子だ! 菓子を喜ばん人間など、それこそどこかの鍛錬バカくらいだろうからな!!」
文「だっ、誰が菓子を喜ばんといったかバカタレぇ!」
小「よしっ! ではこうなったら、誰が一番早く、そして一番多く後輩にプレゼントを配れるか勝負だ! 無論委員会など関係なく、全後輩に配ること! まずはドクタケから忍装束を盗んでくるのだ! いけいけどんどーん!!」
留「あ、てめぇ小平太!!」
文「フライングとは卑怯だぞお前達!!」
長「…………行ってしまった…………。………………小さなボーロでも焼いて、下級生に配るか……」


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楽しかった。でもト書きがないとやっぱり物足りないですな……。
でもこの三人はこういうところで仲良く競いそうだなぁと思ったので、書けて楽しかったです!